「そろそろ転職しようかな」と思ったとき、多くの人が最初にやることは、転職サイトへの登録ではないでしょうか。こんにちは、シンクキャリア代表の金子圭一朗です。今日は少し挑発的に聞こえるかもしれませんが、私がずっと伝え続けている「転職はサイト登録から始めてはいけない」という話をさせてください。
転職サイトに載っているのは、世の中の求人の「ごく一部」
求人サイトに掲載されているのは、広告費を払って募集をかけている企業だけです。特に栃木のような地方では、求人を表に出さず、社員の紹介や縁故で採用を決めている会社が今も少なくありません。つまり、サイトの中だけで会社を探した時点で、選択肢のかなりの部分をはじめから見落としてしまうのです。
もうひとつ知っておいてほしいのが、転職エージェントのビジネスモデルです。エージェントは、あなたが転職すると企業側から成果報酬を受け取ります。だからどうしても「転職させる」方向に力学が働きます。サービスが悪いという話ではありません。ただ、そういう構造の上に成り立っているサービスだということは、使う側が知っておくべきだと私は思います。
大切なのは「受かること」ではなく「選べる状態」を作ること
私は2014年から6年間、大学生向けの就活支援に取り組み、80名の学生を個別指導してきました。のべ157社の内定、1人平均2.4社、複数内定率70.5%(※新卒学生向け就活支援での実績です)。この経験から、確信していることがあります。
参考までに、私が就活支援をしていた頃によく引用していた調査では、内定を取れた学生のうち半数以上は「内定1社のみ」でした。1社しか手元になければ、比べることも、選ぶこともできません。行くか行かないかの二択を迫られるだけです。
うまくいく人は、目の前の1社に「受かること」を目指していません。複数の選択肢を手元に並べて、そこから「自分で選べる状態」を作ることを目指しています。転職も同じです。1社だけ受けて、受かったから行く——それは会社に選ばれただけで、自分で選んだとは言えません。比較できる状態があって初めて、「今の会社に残る」という判断さえも、納得して下せるようになります。
企業を絞り込むほど、転職は苦しくなる
就活支援をしていた頃、選考で行き詰まる学生には、はっきりした共通点がありました。「自分の学部に関係のありそうな会社だけ」「名前を知っている会社だけ」と、受ける前から企業を絞り込んでしまうことです。私は当時から、教材でもセミナーでも「企業の絞り込みは、自分の首を絞める」と繰り返し伝えてきました。これは、転職でもまったく同じです。
「今の業界しか経験がないから」「自分にはこの職種しか無理だろう」「家から近いあの数社の中から選ぼう」——転職を考え始めた人の多くが、動き出す前の段階で、無意識に選択肢を消してしまいます。しかし、あなたの経験がどの会社でどんな価値を持つかは、外に出して比べてみるまで分かりません。実際、私が支援してきた中でも、「自分とは関係ない」と思い込んでいた業界で高く評価された方は少なくありません。
候補は、最初はむしろ多すぎるくらいでいいのです。絞り込むのは、選考が進んで、比較できる材料が手元にそろってから。「選ぶ暇があったら、まず受けてみる」。この順番を守るだけで、転職活動の景色は大きく変わります。
私が伝えている「転職の5ステップ」
シンクキャリアでは、転職活動を次の5つのステップで設計します。
- 企業選び——求人の有無に関係なく、通える範囲の会社を自分でリストアップする
- エントリー——転職サイト経由ではなく、企業のホームページから直接応募する
- 書類——読み手に「?」を残さない職務経歴書を作る(書類選考は減点方式です)
- 面接——聞かれたことに真っ直ぐ答え、回答にハテナを残さない
- 内定後の意思決定——内定を複数そろえてから、比較して選ぶ
直接応募には、企業側に採用コストがかからず、応募の意欲がまっすぐ伝わるという利点があります。順番さえ間違えなければ、特別な経歴がなくても、転職活動は驚くほど整理されます。逆にサイト登録から始めると、「出てきた求人に応募するだけ」の受け身の活動になりがちです。
求人サイトの外に、企業を見つけにいく
では、求人サイトやエージェントに頼らず、どうやって会社を見つけるのか。私がおすすめしているのは、「いま募集しているかどうか」をいったん忘れて、通える範囲にある会社をあらゆる方法で洗い出すことです。企業のホームページ、地元の新聞や経済ニュース、商工会議所の会員企業一覧、工業団地や駅前オフィスの企業リスト、取引先や知人から聞く評判——探し方は、実はいくらでもあります。
リストができたら、興味のある会社には、求人が出ていなくても直接アプローチして構いません。企業のホームページからの直接応募は、会社側に紹介手数料も広告費も一切かからない、実はいちばん歓迎されやすい応募方法です。「募集していないのに応募していいのか」と不安に思うかもしれませんが、地方の中小企業の多くは「良い人がいれば採りたい」が本音です。表向きの求人を出さず、紹介や直接の出会いだけで採用を続けている会社が、栃木にも数多くあります。
内定は「もらってから選ぶ」——断っていい
そして、5ステップの最後がいちばん大切です。内定は、承諾ではありません。内定が出た時点では、「選ぶ権利があなたの手に移った」というだけのことです。私は就活支援の時代から、「内定を取り、そして選ぶ」ことを一貫して勧めてきました。教え子たちの内定数が1人平均2.4社だったのは、偶然ではなく、この考え方の結果です。
複数の内定が手元に並ぶと、初めて本気の比較ができます。給与や休日といった条件面はもちろん、「10年後もこの会社で働いている自分を想像できるか」という価値観のレベルまで、落ち着いて考えられるようになる。じっくり選んだ入社先は納得度が高く、だからこそ長く働き続けられます。逆に、たった1社の内定に飛びついた転職は、入社後のミスマッチにつながりがちです。
選ばなかった会社には、誠実にお断りをすれば良いのです。断ることは失礼ではありません。むしろ、比較して選び抜いた1社に全力で貢献することこそ、あなたにとっても、その会社にとっても、いちばん幸せな結果だと私は考えています。
転職を決めていなくても、始められる
この5ステップの良いところは、「転職するかどうか迷っている段階」からでも始められることです。地元の企業を調べ、自分の経歴を言語化していく過程で、「動くか、残るか」を判断する材料が自然とそろっていきます。私は、「転職しない」という結論も立派な成果だと考えています。
企業を絞らず、視野を広げて候補を並べる。求人サイトの外まで探しにいく。複数の内定をそろえてから、自分の意思で選ぶ。遠回りに見えて、これが妥協しない転職へのいちばんの近道だと、私は500人以上の支援を通して確信しています。
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